酒呑童子伝説
平安初期(八世紀)、越後国にひとりの男児が生まれました。十六カ月も母の腹で育ったのちに産まれたその子供は、男子ながら輝くばかりの美しさで、両親は「外道丸」と名付け、たいそう可愛がったそうです。
しかし手のつけられない乱暴者に育った外道丸に困り果てた両親は、彼が八歳の頃、国上山の国上寺に稚児として外道丸を預けます。 その後、母が亡くなったことを機に改心した外道丸は、仏道修行と学問に励むようになりました。
外道丸は稀に見る美男子だったため、近郷近隣の娘たちから葛篭がいっぱいになるほどの恋文が届きますが、一心に修行に励む外道丸はそれらに見向きもしません。
ところがある日、叶わぬ恋を悲観したひとりの娘が淵に身を投げ自殺してしまいます。
思いもよらぬ話に驚いた外道丸が恋文の詰まった葛篭を開けると、中から娘たちの怨念が白い煙となって立ち昇り、外道丸は気を失ってしまいます。
目を覚まし、異変に気がついた外道丸が鏡井戸を覗くと、水面には鬼の形相に変わった自身が映っていました。鬼になった外道丸は国上山の中腹にある断崖穴に身を潜め、自らを「酒呑童子」と名乗るようになります。
その後、国上寺で一緒だった茨木童子、松之山の金剛童子をはじめ各地で同士を募り、石熊童子ややなきた童子の子分らと修行に励み、京の都へと向かったそうです。
分水太鼓には酒呑童子と外道丸、酒呑童子配下の四鬼の面があります。
個々の鬼には名前があり、それぞれの性格も違います。
ステージ上で暴れまわる鬼の所作や打ち方を見比べるのも分水太鼓を見る一つの楽しみです。